
人事評価制度の誤解
人事評価というと何をイメージするでしょうか?
一般的には、昇給や賞与の際に上司が部下の査定を行い、それによって昇給や賞与の金額が決まるといったイメージが多いと思います。
人事評価制度は結果的に賃金を決めることにもなりますが、それはあくまでも結果です。
しかし、以下のような人事評価制度を導入している企業は多くあります。
賞与の金額をきめるために、半期ごとに各人の成績に点数をつける
人事評価制度を実施 本人に自己評価をさせることなく、上司が一方的に評価
評価結果は本人にフィードバックされることもないが、賞与には差がつく
人事評価制度を実施 本人に自己評価をさせることなく、上司が一方的に評価
評価結果は本人にフィードバックされることもないが、賞与には差がつく
一見、頑張った社員の賞与が多く、頑張っていない社員の賞与が少なくなり、メリハリがあるようにも見えます。
しかしこの方法では本人は「なぜこういう評価に至ったのか?」、「何をどうすればよいのか?」といった点は不明のままです。
こういった人事評価を行う大前提として人事評価制度を導入して賃金にメリハリをつければ職員はガンバルだろうという考えがありますが、果たして本当にこういった方法で職員はやる気を出すのでしょうか?
人事評価は何のために行うのか?
医療機関・福祉施設だけでなく多くの企業の根本的な問題として、経営者の意思がうまく社員に伝達できず、また共有もされてないという点が挙げられます。
例えば、医療機関・福祉施設の考えを職員が理解していないと考える経営者は多いですが、それでは実際に職員に対して本当に医療機関・福祉施設の考えを伝えているのか?という問題があります。
医療機関・福祉施設の理念ひとつをとってみても、本当に職員に伝わっているでしょうか?
職員一人ひとりが考え行動することを多くの医療機関・福祉施設の経営者が望んでいるはずですし、多くの職員も自分の能力を発揮して自己実現を図りたいと望んでいるはずです。
しかし、そのための重要な仕組みがないという医療機関・福祉施設も多いのではないでしょうか?
そこで、この仕組みづくりの過程で、経営者が大切にしている考え方を人事評価制度として具体化していくのです。
人事評価制度はストーリーを描いてつくりあげる
人事評価制度を整備するときに弊所がご提案しているのは、最初に次のような大きなストーリーを描いてみる方法です。
Step1
どの医療機関・福祉施設においても、設立時に「こういう医療・福祉を行いたい」という理念があったからこそ、現在の姿があるはずです。
まずは、その理念を再認識することからスタートすることからはじめましょう。
特に長い年月が経過している医療機関・福祉施設ほどこのプロセスは重要です。
Step2
医療機関・福祉施設の理念を今後も実現していくためには、どのような人材が必要でしょうか?
理念を実現のために必要な組織と人材能力(期待人材像)はどのようなものかを明確にしてください。
役割、職務基準、知識や技能、行動要件などがその切り口として考えられます。
Step3
職員を期待人材像に導くための仕組みとして人事評価制度を設定します。
評価で差をつけるという発想ではなく、人を育てるという視点が必要です。
Step4
そして、人事評価制度を処遇でバックアップするために賃金制度と研修などの育成プランを設定します。
以上のストーリーに基づいて、人事評価制度のコンセプトをまず作るのです。
医療機関・福祉施設の理念実現のために人を育てるという視点の人事制度であれば、医療福祉の志をもった職員の共感は得られやすいはずです。
しかし、こうしたストーリーを最初に描いておかないと、賃金を支払うことだけに目を奪われ、「評価の公平性」などだけが独り歩きしてしまい、人事制度が医療機関・福祉施設理念や施設の現状とかけ離れてしまうことはよくあります。
職員の退職理由として「医療機関・福祉施設としての理念やビジョンが見えないという」という理由も多いですから、基本理念や経営方針を「職員にわかるように明確にする」ことで、組織風土改善へ繋げることも重要です。
制度の見直しは職員参加型で
弊所では、人事制度の見直しを行う際には、医療機関・福祉施設内でプロジェクトチームを組んで頂き、そのチームの職員が主体となって、他の職員を巻き込んだ形で新しい人事制度を職員全体で作り上げて行く方法をご提案しています。
正直言ってこの方法だと人事制度作りに少し時間がかかります。
なぜなら、今まで人事制度の改定を行ったことのある職員はまずいないからです。
コンサルタントが人事制度を作ってしまえば、確かに早いかもしれませんが、逆に運用する段階でつまずきます。
医療機関・福祉施設の職員が主体になって、人事制度を作っていくことで実際の運用をスムーズに行うことができるだけでなく、参加した職員が今後のさまざまに起こり得る問題解決の手法を身につけることができます。
また、職員自らを参加させることで、制度変更に対する抵抗感を少なくさせる効果も期待できます。
